怪我をしない身体と、最良のパフォーマンス。
2024.2.20 / バランスコラム
怪我を予防することと、パフォーマンスを向上させること。それらは同じことであり、別々のことではありません。パフォーマンスが良好なのは、自分の動きの出力がちゃんと外に放出されているということ。そして自分の身体に負荷がかかりすぎていない、ということです。
怪我をする、というのは、体のどこかに負荷がかかりすぎている、ということです。
怪我してしまうアスリートは少なくありませんし、練習で怪我するケースも多く見られます。本来であれば、本番において怪我なく最善のパフォーマンスが発揮できるように、と練習するはず。なのに練習で怪我をして治せずにいるのは残念なことです。
彼らを指導する立場にいながら「怪我をしないようにする」ための提案ができない人がいます。それは「怪我はつきもの」「怪我をするのはその部分が弱いから」という考えを無意識のうちに前提としてしまっていることが大きな原因と思われます。
「怪我をするのは弱いから」という考えを前提とすれば、選手が「肩」に問題を抱えていたら「そこが弱いからそこを鍛えよう」となるのは当然でしょう。でもそれは選手にとって良い解決方法でしょうか。まずはその前提を疑うべきではないでしょうか。
選手自身も指導者も、「そこが弱いからそこを鍛えなさい、トレーニングしなさい」という、その前提となる考え方を疑い、もっと丁寧によく考えてみると良いでしょう。これまでに見えてこなかった面白い発見があったりするものです。
そもそも、本能的にも現代スポーツ医学的にも、違和感や痛みがあれば休ませるのが基本です。にもかかわらず、さらに鍛えようとすることは、さらに働きかけ負荷をかけてしまうということです。
鍛えれば筋力がつき、肩周りは強化されるかもしれません。けれど、そこに負荷がかかる状況そのものはなにも解決されません。その状況のまま刺激が伝達され続け、肩を痛め続けている。それではずっと治らないのも当然です。
相対的にみるとトップの選手ほど怪我は少ないでしょう。パフォーマンスと怪我しづらいこととは比例しています。
そうではない多くのアスリートは、いちど怪我をするとなかなか治らなかったりします。それは、鍛え方が足りないからではなく「そこを鍛える」という同じ思考のまま同じことをしているので、同じことが続いているのです。
練習やトレーニングで負荷やプレッシャーをかけることは、実践においてパフォーマンスするための大切な経験です。重要なことは、負荷やプレッシャーのなかでも自分が崩れずに「動ける」ことです。ここを「耐える」ことと勘違いしてはいけません。
つづく