ポーズをとることより
カラダへの気づきが大切
ヨガと聞けば「ポーズをとるもの」と、多くの方はイメージするものなのかもしれません。でも、あるポーズができるようになればそれでOKというものでもなく、自分のカラダへの意識を高めることのほうが本質的にずっと大切なことのように思います。私自身、ヨガを学んでから「ああ、バレー選手時代にこういうことを知っておいたらよかったな」と思うようなことがいくつもあります。
競技をやっているときには「自分のカラダは動いて当たりまえ」と思っていましたし、カラダが動かないのは体力がないからだと思い込んでいました。でも、ヨガを学んでからは、その頃にはわからなかったカラダの使い方もよくわかるようになりましたし、もし早いうちにヨガを学んでいたら選手時代に大きなケガをすることもなかったんじゃないかと思いますね。
私がヨガのレッスンを行う際に大切にしているのは、たとえば、いま自分のカラダはどういう状態なのか。いまの自分の呼吸はどうなっているか、といったふだんはあまり意識しないような自分のカラダについて「気づき」を得てもらうこと。そして、その「気づき」を暮らしのなかでいつも持ち続けられるようになってもらうことです。そういった意味では、生活のすべてをひっくるめてヨガだと思うし、カラダについて考えることだってヨガ。ひととの接し方やものの考え方や思想も含めてすべてヨガなんだと私はとらえています。
ココロのボードで
カラダと呼吸を整える
たとえば、背筋の伸びた「いい姿勢」というものは、呼吸がすーっと自然にカラダの中に入っている状態のこと。だから、私のレッスンではムリに外側から「いい姿勢をとりましょう」と言うのではなく、まずはしっかりと呼吸を意識するということから始めます。
呼吸が入るってどういうこと? って考えてもらったり感じてもらったりしながらレッスンしていくうちに、だんだん足が地についてきて、背がすっと伸びてきて、浅かった呼吸が胸まで入ってきて、肩もひらき始めて、さらにお腹のほうまで入ってきて、背中も動いてきて、カラダの奥深くにまで入ってくるようになって、呼吸が「ああ、すごくラクに入ります」って感じてもらったときには、もう結果として勝手に姿勢が整っている、という感じ。
レッスン前のウォーミングアップには「ココロのボード」に立つようにしています。ボードに乗るとちょうどいいところでピタっと足が吸いつくみたいな感触があるんですね。そうすると足元の安定ができて、カラダ全体の緊張がとれて、カラダのバランスがとれてる状態になる。それこそ呼吸も入りやすい状態になっているし、カラダ全体がリラックスしているし、軸もできているので、ただ平らなところでやるよりもずっと前屈がしやすいんですね。まずはいいポジションを探してカラダを整えること。そういう準備をしてからのほうが、その後の動きがずっと簡単にできる感じです。
つながるカラダは
ぜんぶでひとつ
私の場合、自分の不調には自分で気づいて、自分なりにカラダを動かしながら自分で調整するということをよくやります。呼吸がすこし浅いかなと感じるようなときには、「ひもトレ」をお腹に巻いたり、胸の下のあたりに巻いたり。ヨガのレッスン前のウォーミングアップであれば、やっぱり胸のあたりに巻いたり、腕にはめて伸ばしたり。レッスンのなかで使うときには、参加者の方々に胸のあたりにひもを巻いてもらって、ひものテンションを感じながら呼吸してもらうと、それまで動かなかったところが動き始めたり。あとは、ひもを腕に巻いてもらうと、ただそのまま腕を上げた時よりもずっと上がるようになったり。そういうことはすごく多いですね。特に高齢の方ほど、「ひもトレ」の効果がはっきりと現れるようです。
ヨガと「ひもトレ」の根底には「カラダはぜんぶつながっている」という共通の考え方があるような気がします。肩が痛いからそこを押せばいいという話ではなく、原因は意外と足元にあったり、もっと違う場所にあったり、あるいは内臓にあったりする。逆に、足首を治したら手が上がるようになったとか、首が動くようになったとか、そういうこともよくあります。カラダにはそれぞれ「手」とか「腕」とか名前はついていますけど、全部つながってひとつのものだと思います。
だから、ひもをカラダの一部にただ巻いただけなのに、肩の歪みがなくなって、気づいたらカラダ全体がラクになっていた、なんていうのは、それほど不思議なことでもなく、むしろすごくよくわかる話なんですよね。